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ゲストが「私なりの大津線の楽しみ方」をそっと教えてくれるかもしれません。

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 膳所本町駅、石山寺ゆきのりばにある「Zギャラリー」をごらんになりましたか? 今年から始まった、地域の学校とのコラボレーションの一環として、膳所高校書道部・写真部の作品を展示してあります。

 今月のo2talkでは、膳所高校書道部の顧問をお務めの神田浩さん、それから書道部の皆さんが、書による表現の楽しさについて語ってくださいました(部員の皆さんのインタビューは、写真をクリックすると読めます)

9月16日、膳所高校書道室にて
インタビュアー=黒田一樹(京津文化フォーラム82 専務理事/芸術監督)

「思い切った自己表現を目指してます」
神田浩さん

書道「班」大歓迎!

−膳所高校は県下随一の名門と伺っていますが、部活動でも優秀な成績を残しているようで、文武両道なんですね。

 私も膳所高校の卒業生なんですが、それは昔から盛んに云われているんです。スポーツは成績を挙げているのは最近は空手とか。活動としてよく頑張っているのはサッカーや野球。練習自体は凄く頑張ってます。バスケ、ラグビーも頑張ってるし、バドミントンもですね。女子のテニスもなかなか強いと聞いてますし、運動部は頑張ってるな、と云う印象があります。
神田浩さん  それから、最近は文化部がまた頑張りだしてます。今年の夏に運動部はインターハイ、文化部は全国から1万数千人高校生が集まる、インターハイと並ぶような行事の「全国高等学校総合文化祭」が徳島でありまして、ウチも二人が県の代表で出させていただいたし、それ以外でも放送班や吹奏楽班、合唱班が…。

−あ、「部」じゃなくて、「班」なんですか、珍しい。僕の出た高校もそうで、僕は「吹奏楽班」だったのですが、それなりに「班」というところはあるんでしょうか?

 去年までの校長の話ですと、戦時中の名残やそうですね。ちょうど新聞の記事に載ったんですけど、「『班』は是非残して欲しい。それは単に残すだけやなくって、戦時中にはそんな、名前まで変えられるような、そこまで世の中が変わってしまうんや、そのことを覚えておくために」って。

−反面教師なんですね。

 そうですね。でも、対外的には「班」って云うとぴんと来ない方が多いんで、対外的にはウチの班も「部」で統一しています。

神田浩(かんだ・ひろし)

 1960(昭和35)年大津生まれ。大学在学中に書道に出会い、池田哲也(若邨)氏に師事。
 大学卒業後、中学校の国語教諭を経て、守山北高校で15年間書道教師として勤務の後、2002(平成14)年から母校の膳所高校で教鞭をとるとともに、書道部顧問に就任。
 滋賀県書教育研究会事務局長・社団法人滋賀県書道協会常任理事も兼務。毎日書道会会員。大津市在住。雅号は浩山。

若いエネルギーの「萌芽」

 ところで、3月に大津市歴史博物館で初の学外展「萌芽」をやりました。学外展を部員がやりたいということで、引っ張る子がいたんですけど、「やるんやったら歴博でやるくらいの意気込みやったら面倒見るわ」と、まだ時期尚早と思いましたし、あきらめさせようと半分思って云ったんですけど、「やる」って云うし。歴博が一高校の書道部ごときに展示ホールを貸すかなと思って問い合わせたら「エエです」と云わはりました。(笑)

長田真理子さん−あーあ、やっちゃった。

 もう後戻りできない。それで、部員は手分けして放送局や新聞社を回って広報活動したりしました。展覧会の中身としては、大きな作品を、ざあっと前面に出して展示しました。鳥の子紙という強い紙に、 全員が筆をリレーしながら書いたものです。
 私自身が以前から大きい作品を作るのが好きで、もともとは文化祭の展示作品として部員に「やらないか」と持ちかけたんです。

ーウホッ、いい話ですね。

 展示できるスペースがありましたんで、これをメインに展示しようと。あとは各自が展覧会のための作品作り。おかげさまで思っていたよりもたくさんの方に見に来ていただいて。テレビとかでも取材していただいて。本当に予想以上に大きい反響をいただいて…。
 カレンダーも作ったんですけど。それも2日目に売り切れるような状態。嬉しい悲鳴でした。3日間で540人の方に来ていただきました。3年生は7月の文化祭で引退して今はお勉強の日々を過ごしていますが、その子らが中心で引っ張ってくれました。また来年の3月に第2回展を同じ大津市歴史博物館でやろうと思っています。

浦川千尋さん 部員にはいつも云っているんですけど、学校の授業では学べないことで、部活で学べる部分はたくさんあるんで…対人関係とか、ね。展覧会に来て下さった方に部員達は3日間立ちっぱなしで挨拶や自分の作品の説明などをさせましたが、これもそうした学びの一つと考えています。

−すごいパワーです。僕も高校の時にルーティンでない、クリスマス演奏会や第1回定期演奏会を立ち上げたときは燃えましたね。進学校といっても、さっき廊下ですれ違った生徒さんも、のびのびしている印象があります。

 昔から「全人教育」が錦の御旗になってますからね。体育祭とか文化祭も7月にテスト終わってから時間がない中で準備するんですけど、ものすごく活発で盛り上がります。もう本当に凄いですよ。

山田美郷さん 赴任して1年目は担任はあるわ、それまで書道部もそれほど自主的に活動していなかったんで、文化祭で展示するのもイチから教えなきゃいけなかったんでちょっと大変でした。リーダーの子なんか、「センセ、明日の朝早く集まりたい。学校何時に開きますか?」最初6時って云いよったんです。ムチャ云うなと「第一お前も遠いやろ、どうやってくるんや」云うたら、「じゃ、泊まる」なんて…。

−でもね。そういうのを積み重ねていって、単なるルーティンではない「伝統」が生まれていくと思うんですよ。同じ釜の飯を食い、達成感を味わった者同士がレヴェルの高い連帯感を強めていくと云うことはできると思います。

 おっしゃるとおりです。達成がないと脱皮できない。僕の中には、書の制作を通じてそういうのを教えていきたい部分もあるんです。書の制作は自分を見つめる行為の繰り返しになります。きれいに書くとか、そういうものじゃなく、思い切った自己表現を目指しています。これが自分を見つめていくことになります。それもひとつの勉強。

 もうひとつの勉強は書を媒介として、非常に閉鎖的な「学校」と云うところから外の世界をかいま見たり。京阪の膳所本町駅におけるこの展示も、そういう場になっている。

−「Zギャラリー」ですね。

白子裕理さん 本当にああいう場を与えていただいて、展示する順番を決めさせて、一人がひとつのスペースをもらって、何を書くかも自分で考えなさいと云ってあるんです。そうすると順番が来ると一生懸命考えてますしね。そういう創る歓びを、たくさんの方に見ていただける、いい場をもらったなと喜んでいます。

 当初は書道部だけでスタートさせてもらったんですが、ほかにも展示できる活動をしている部がありますから、写真部が参加するようになりました。今年の文化祭でいい写真が並んでいきましたから、「センセ、これで行きましょ」って。
 ところが、出してみるとまんざらでもないみたいで…。ウチはスペースが減って、はじめは部員もちょっとがっかりしていたところもあったんですけど、写真と相乗効果がありますし。表現するってのは、必ずそれを見る他者がなかったら成立しないから。

−おっしゃるとおりで、芸術鑑賞は創り手と受け手の間で、作品を媒介として成立するイメージ・コミュニケーションですからね。

 せっかく見ていただくんやから、見た人が何かを感じる。凄い迫力や、ぐうっとした思いや、ああ可愛らしいとか、若さあふれる、とか。そう云うように作品を創れ。これはものすごいエネルギーを自分が叩き込まんと伝わらへんと、よく云うんですけどね。

Zギャラリー
膳所本町名物、「Zギャラリー」。4月から、「大津・志賀地域まちづくり協働会議」の呼びかけで始まった試みです。
他には、大津高校音楽同好会の京阪膳所駅前ライブなども行われました。

Lefty A Go-Go !!

−ところで、実は正直申し上げまして、こんな楽しい話を伺えるとは思っていなかったんです。と云うのも、僕は左利きで、書道の時間が苦痛で仕方なかった。筆は「引く」ものですが、左で硬筆だと「押す」感じになる。仕方がないから使えない右手で無理矢理引いてみたり…。しかも、下手な順番に返却されるんですよ。いたく傷ついてました。

 ウチにもいますよ、左利きの部員が。

−ええ〜っ!?

 入部する時点では、体験みたいな勧誘があって。大きい字を書くんです。「私左利きですけど、いいですか」って。右では全然書けないんです。「かまへんよ」って。ずっとその子は左で書いて、全国のコンクールでも入賞しましたし、県の代表として、全国高文祭にももう1人の部員と二人で行きましたし。彼女も、それまで書道が凄く苦痛だったのがころっと変わって、自己解放につながったんですね。解放したエネルギーによって、生き生きとした書が書けるんです。

−そういえば、漢文の授業で毎回、論語を白文で筆で書いて提出させられていたんですよ。はじめ「可」だったのが、「良」になり、なぜか「優」、信じられなかったんですよ。どうしてなんだろうって。そしてある日とうとう「秀」が返ってきて、その横に「左筆ナリヤ」って書いてあって…。本当に、今でもそのこと思い出すと泣きそうになります。見ていてくださる先生はいらっしゃるんだなって。

松山佳矢さん 書を上手い下手で見ていたら、つまんないものになってしまうと思うんですよ。授業でもそうですけど、上手い下手じゃなくって、まずはとっかかりとしては好き嫌いで見なさいとよく言います。そういう見方で書を見た方が、本当のところに近づいていけるから。

−空海よりも上手に書こうなんて、思わなくてもいいんですね。

 余談になりますが、空海の書は器用なんですよね。「ほれ見てみい。これが中国の最新モードの書やで」なんて感じをうけるところもある。それに対して、最澄は率直ないい書を書きますよ。ムダがない、清らかな書です。生き方自体に関わるのかもしれませんが。

左利きで小篆文字
アタマをかく先生
こういう線を引くんやで
おお、左利き!「僕はどうやってもこんな線は出せへん」とアタマをかく先生。

書を書いて、街に出よう

−さっきね、「Zギャラリー」見てきたんですよ。現代芸術にかかわっている僕みたいな人間でも、書なんて縁遠いものと思っていたんですが、目から鱗が落ちた覚えがします。

楠本雅美さん 僕も、始めるまでは「あ、こんなんあるんやな」と見やはる程度やと思ってたんです。膳所高の書道部、頑張ってはるんやなと。ところが、私もアレ始まってから何人もの人に云われますし…「膳所本町の」って。
 それに「見ていただいてますか」と云ったら「はい」だけじゃないんですね。「こないだからかかってる薄い墨のあるけど、薄い墨のもエエもんですね」って。よう見てくださってるんやな、って。すごく嬉しいんです。

−ちゃんと鑑賞してくださっている。コミュニケーションが成立しています。

 それに、全然違うところで、夏休みに大津で書道関係の会があって発表したんですね。その会長さんが「神田さん、駅でおたくの書道部展覧会をしてますか」。

−なんと。

富澤優衣さん 会から案内状をあちこち出すんですね。僕の名前も発表者として出していただいていて、もらった方の中に会長さんに手紙で書いてきはる方がいたんです。京阪の、膳所高で生徒の作品を指導している作家に会いたいと。そんだけ見ていただいてるんやなと。
 発表の場もコンクールだけじゃなくって、それだけではちょっとね。本当に良い場を頂いたと感謝しています。

−「書を捨てよ、街に出よう」と云いますが、「書を書いて、街に出そう」という感じでしょうか。そうだ、今度ね、大津線感謝祭があるんですよ。その題字、皆さんで書いてみるのも面白いんじゃありませんか?地域との一体感の醸成にもつながってくると思いますし…。京阪電車に提案してみますよ。

 それ、いいんですか? そんなに有難いことはないんですけど…。

−せっかくだから、生徒さんのお話も伺えますか?

 ええ、ぜひ聞いてやってくださいよ。

(部員の皆さんの写真をクリックするとポップアップします)

みんなで書いた「大津線感謝祭」

練習風景部員の皆さんは、ひたむきに、さわやかに書を楽しんでいます。

 書の魅力から教育論まで、楽しい話は尽きませんでした。また、錦織車庫の入口の横断幕に、若さにあふれた見事な「大津線感謝祭」の文字−楽しい「線」−が躍っていたのをご覧になった方も多いと思います。
 今後も、沿線の学校などとのコラボレーションをすすめ、もっと身近な、魅力あふれる生活のステージとしての京阪電車を感じていただきたいと考えております。「Zギャラリー」にも、若さと実力あふれる作品を見にいらしてください。きっと元気になれることと思います。

次回のo2talkもどうぞお楽しみに!


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